剣道の六段審査は、多くの剣士にとって人生の大きな節目となる段位です。
合格率は30%前後位と非常に低く、「何度挑戦しても壁を越えられない」という声を耳にします。
なぜ六段はこれほど難しいのでしょうか。
審査会場で話を聞いた所、多くの審査を受ける方たちは、
多くの諸先輩方の指導を受け、その多すぎるアドバイスに
迷いを生じてしまう場合もあります。
本記事では、六段審査の位置づけや難しさを整理させて頂きます。
六段審査の位置づけと基準
剣道規則によれば、六段は 「剣道の精義に錬達し、技倆優秀なる者」 に与えられるとされています。
これは、全日本剣道連盟が六段審査における合格基準となっています。
単に技術が優れているだけではなく、剣道の本質や精神性を深く理解し、それを立ち合いや所作の中で自然に表現できる剣士であることが求められます。
「剣道の精義に錬達し」とは、剣道の根本にある理念や精神、そして奥深い教えをしっかりと理解し、身につけている状態を指します。
ただ打つだけではなく、心・技・体が一体となった剣道を体現できるかどうかが問われるのです。
「技倆優秀なる者」とは、技術的にも高いレベルにあり、安定した実力を備えていること。
打突の冴え、姿勢、間合い、残心――すべてにおいて優れた剣道を見せられるかが評価されます。
六段審査では、この二つが揃って初めて「合格にふさわしい」と判断されます。
つまり、技術と精神の両面で成熟した剣士であることが、六段の条件なのです。
初段・二段・三段 :
- 正しい着装と礼法
- 適正な姿勢
- 基本に即した打突
- 充実した気勢 示す剣道
四段・五段:初段ないし三段の留意項目に下記の項目を加えたもの
- 応用技の錬熟度
- 鍛錬度
- 勝負の歩合
六段以上:六段から八段までの実技審査は、
初段から五段までの着眼点及び留意項目に加え、下記の項目について、更に高度な技倆を総合的に判断し、当該段位相当の実力があるか否かを審査されます。
- 理合(りあい)
- 風格、品格
理合とは「理にかなった動きそのもの」「技の原理やメカニズム」
「目指すべき指標」を意味します。
つまり六段は、「これが剣道である」と体現できる立ち合いを求められる段位です。
技術的な完成度に加え、風格や品格が立ち合いに、にじみ出ているかどうかが評価されます。
六段審査の難しさ
-
合格率の低さ
全国的に合格率は30%前後位です。 -
心技体の一致が不可欠
ただの速さや強さでは評価されず、冴え・気迫・姿勢のすべてが揃った一本が必要です。 -
人間性の反映
礼法、立ち居振る舞い、言動に至るまで、その人の人間性が審査に現れます。 -
審査員の視点が変わる
三段・四段までは「できているか」を見るのに対し、六段は「円熟しているか」が問われます。
よくある不合格パターン
- 普段の実力が発揮されない
- 待ちすぎて面を打たれてしまう
- 稽古不足で迷いが生じてしまう
- 緊張してしまう
👉 何かの要因で本当の実力が発揮できない場合があります。
突破するための心構え
前日本剣道連盟HPより参考にさせて頂きました。
段位審査に向けて 第14回 松田勇人範士に訊く
◎審査の時はまず心静かにして落ち着くこと
前日本剣道連盟HPより:第14回 松田 勇人範士に訊く | 全日本剣道連盟 AJKF
日ごろ、瞑想やイメージトレーニングなどを取り入れるなど
心の在り方を作っていくことも大事なポイントではないでしょか。
上記の内容をまとめましたのでご参考ください。
有効打突のために必要な要素
- 間合・気迫・剣先の働きが揃って初めて評価される打突になる。
- 自分の「打てる間合」を理解し、そこへ入る過程で相手を崩す。
触刃の間、交刃の間を理解する - 間合を詰める際は、気力を充実させ、中心を取ることが重要。
剣先と攻めの工夫
- 剣先を通じて相手との「縁」を保ち、やり取りを続ける。
- 三殺法(剣・技・気を封じる)を活用し、相手の崩れを捉える。
- 捨て身の技で打突の好機を逃さず、出頭技・応じ技で対応。
構えと心の在り方
- 「懸待一致」の構えで、いつでも打てる・応じられる状態を保つ。
- 打ち気に逸らず、相手に応じた対応力を身につける。
- 「ため」をつくり、驚懼疑惑を生じさせない安定した構えを意識。
気位・風格と身体の使い方
- 段位にふさわしい気位・風格は、日々の鍛錬の積み重ねから生まれる。
- 構えは「上虚下実」:上半身の力を抜き、下半身に力を込める。
- 「臍下丹田」に力を入れ、腰で打つことで体の安定と技の深みが増す。
- 後ろ姿に気を使い、崩れないようにする。
稽古での具体的対策
-
模擬審査を繰り返す
本番に近い緊張感を道場で再現し、慣れておく。 -
映像で自己確認
立ち合いを録画し、攻め・残心・礼法を客観的に見直す。 -
日本剣道形を徹底
形に心を込め、基本と品格を磨く。 -
心身のコンディションを整える
体力よりも集中力の維持が重要。日々の生活リズムを整え、余計な疲労を残さない。
名言からのアドバイス
上級者をめざすものとなりますので、
試合ではなく、自己の剣道を審査員に示す場です。
勝ち負けではなく、日々の稽古で磨いた「自分の剣道の真価」を映し出すことこそが求められます。
心の壁を越えるための名言 10選
-
「六段は勝つ剣道ではなく、己を映す剣道である」
勝敗ではなく、自分の剣道の深まりを体現することが求められる。 -
「冴えは力でなく、心から生まれる」
打突の冴えは体の速さではなく、心の静けさから現れる。 -
「攻めとは、打たずして相手を制すること」
本物の攻めは、相手に打たせず自分の間合いに引き込むこと。 -
「残心は剣を終えるものではなく、剣を完成させるもの」
一本は打突の後にこそ真価が問われる。 -
「礼法は形ではなく、心の現れである」
礼に心が宿らなければ、それは形だけに過ぎない。 -
「六段は示す段ではなく、体現する段である」
正しい剣道を知識で語るのではなく、立ち合いで体現する段位。 -
「心が乱れれば、剣もまた乱れる」
精神の安定こそが、冴えある打突を生む源。 -
「勝とうとするな、正しくあろうとせよ」
勝敗ではなく「正しい剣道」を示す姿勢が審査員に響く。 -
「攻めは表にあらわれ、心は静かに燃える」
攻めは堂々と見せつつ、内心は落ち着きと気迫を保つこと。 -
「六段は人を映す鏡である」
技術だけでなく、その人の生き方・心構えが剣道に映し出される。
剣道六段――それは、勝つための剣道ではなく、己を映す剣道を体現する段位です。
この段階になると、勝敗の結果よりも、自分の剣道がどれだけ深まっているか、どれだけ心と技が一体となっているかが問われます。
「六段は勝つ剣道ではなく、己を映す剣道である」という言葉が示すように、審査ではその人の剣道そのものが評価されるのです。
打突の冴えは、力やスピードだけでは生まれません。
「冴えは力でなく、心から生まれる」。
本当に冴えた一本は、心の静けさと集中から生まれます。
体の速さではなく、心の深さが技に現れる――それが六段の剣道です。
また、攻めについても、単に打ち込むことではありません。
「攻めとは、打たずして相手を制すること」。
本物の攻めとは、相手に打たせず、自分の間合いに引き込むこと。
打突の前にすでに勝負が決しているような、そんな気迫と間合いの支配が求められます。
一本の価値は、打った瞬間だけで決まるものではありません。
「残心は剣を終えるものではなく、剣を完成させるもの」。
打突の後にこそ、その技の真価が問われます。
残心があることで、技は一本として完成し、剣道の精神がそこに宿るのです。
そして、礼法もまた形だけではありません。
「礼法は形ではなく、心の現れである」。
いくら所作が美しくても、そこに心がなければ、それはただの動作に過ぎません。
礼に心が宿ってこそ、剣道の品格が生まれます。
六段は、知識を語る段ではなく、正しい剣道を体現する段です。
「六段は示す段ではなく、体現する段である」。
言葉で説明するのではなく、立ち合いの中でそのすべてを見せること。
その姿勢が、審査員の心に響くのです。
だからこそ、心の在り方が何よりも重要になります。
「心が乱れれば、剣もまた乱れる」。
精神の安定こそが、冴えある打突を生む源。
心が整っていれば、技も自然と整い、姿勢も美しくなります。
六段の審査では、勝とうとする気持ちよりも、正しくあろうとする姿勢が求められます。
「勝とうとするな、正しくあろうとせよ」。
その一打に、剣道への真摯な姿勢が込められているかどうか。
それが審査員の目に映るのです。
攻めは堂々と表に現れますが、心は静かに燃えている。
「攻めは表にあらわれ、心は静かに燃える」。
外に見える気迫と、内に秘めた静けさ――そのバランスが、六段の剣道に深みを与えます。
そして最後に、「六段は人を映す鏡である」。
技術だけでなく、その人の生き方や心構えが、剣道の所作や打突に映し出されるのです。
六段とは、剣を通して人間性を示す段位。
その一挙手一投足に、これまでの歩みと、これからの在り方が込められているのです。
まとめ
六段審査は「技の冴え」だけでなく、心技体の円熟と人格識見が問われる大きな壁です。
不合格の多くは、技術的な不足よりも、多忙により日ごろの稽古が不足して、
不安な心理状態にある点もあります。
突破の鍵は、日頃の稽古の中で「体現する剣道」を意識することです。
六段は難関ですが、それは同時に自分の剣道に向き合う機会でもあります。
心を整える所から始めてみてはいかがでしょうか?
お問い合わせ