剣道において素振りは、すべての技の基本です。
面・小手・胴・突きといった技はもちろん、足さばきや姿勢、さらには心構えまでもが素振りで培われます。
しかし「ただ数をこなす」だけでは上達につながらず、正しい方法で取り組むことが大切です。
この記事では、初心者から上級者まで取り入れられる素振りの稽古法を解説します。
初心者の素振り:基本フォームを固める
素振りとは竹刀操作の最も基本となるものです。
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正しい握り方:左手の力を7の力で、小指・薬指・中指でしっかり握り、人差し指と親指は軽く添えます。
右手の力を3の力で小指・薬指・中指で握り、人差し指と親指は軽く添えます。 -
足の位置:左足の踵を少し(指二本分)浮かせ、常に前に出られる状態をつくります。
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振りかぶりと打突:頭上に真っすぐ振りかぶり(45℃の角度で)、中心を外さず振り下ろす
中段から手の内を変えないようにします。
肩関節を中心に左手主導で振りかぶります。 -
素振りには「上下素振り」「左右素振り」「跳躍素振り」があります。
👉 初心者は素振りによって竹刀の操作を覚えます。
それに加え、打突に必要な手の内と身体の動き(足さばき)との調和をはかります。
刃筋を知り、打突の基本を体得します。
初級者(三段以下)の素振り
上下素振り:中段の構えから「手の内」を変えないようにしながら竹刀をできるだけ大きく振りかぶり、止めることなく両腕を伸ばし、左こぶしを下腹部の前までひきつけて充分に振り下ろします。
- 左手の小指は緩めない
- 竹刀が横にぶれないように
- 両こぶしは正中線(体の中心)を外れないように
左右素振り:正面打ちと同じように振りかぶり、頭上で手を返し左面(約45度)に振り下ろし
更に振りかぶり右面(約45度)に振り下ろし、この動作をくり返します。
跳躍素振り:正面打ちに跳躍を付けて行います。
- 上半身と下半身がバランスの取れた打撃動作となるようにします
- 跳躍素振りでは右足の踏み込みを大きくします
- 前進の際に左足の引きつけを早くします
- 前進した際に左足が浮いて右足の前に来ることがないようにします
- 常に正しい正面打ちができるようにします
中級者(四段および五段)の素振り
- 竹刀の正しい操作と刃筋を理解し、習得します
- 打突に必要な手の内を理解し、習得します
- 足さばきと連動する打突を理解し、習得します
剣道の「刃筋正しく」打突とは、竹刀の刃部が打突の方向と一致するように打つことになります。
手の内は最初にしっかりと握った形を維持し続けた上で
手首は柔らかくします。
構え(姿勢)から足さばきと連動する「気剣体一致」の打突をします。
足さばきが遅れたり、体さばきがうまく連動しないことを意識的に修正します。
上級者(六段以上)の素振り
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冴えのある一振り:打突の瞬間に気迫を込め、残心まで意識します
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間合いを意識した素振り:ただ振るのではなく、相手との距離を想定して行います
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呼吸と一体化:息を整え、気合とともに振り下ろします
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極端に強い踏み込み足を戒め、状態の姿勢を崩さず腰の水平移動による安定した体さばきをします
👉 上級者の素振りは「一本の質」を追求する段階となります。
速さや力ではなく、冴え・気迫・姿勢を徹底します。
素振りの回数と時間の目安
- 級位審査の前など:50〜100本(基礎を固めるために短時間集中)
- 試合の前など:200〜500本(体力・反復を重視)
- 段位審査の前など:500〜1000本(一本一本の質を徹底)
基本の素振りは稽古の大きな比重をしめています。
ただ単に数をこなすのではなく、
「千本の素振りをすることで、一本の打突の質が高まる」と心に刻みと
地道な素振りが、やがて実戦での確かな技に繋がるというモチベーションになります。
「稽古は嘘をつきません」
これは素振りにも当てはまります。
毎日の積み重ねが、必ず自分の剣道に反映されるという真実を語っています。
サボればサボった分だけ、上達は遅れます。
逆に、地道に努力すれば、必ず成果は出ることでしょう。
この言葉で日々の努力を肯定し、素振りを続ける原動力となれば幸いです。
※手首など痛めている場合などは
休む勇気も必要です。
無理せずに続けましょう。
👉 大切なのは「数より質」となります。
疲れてフォームが崩れるなら、本数を減らしても正しく振ることを優先します。
素振りを習慣化するコツ
素振りを習慣化するコツを紹介します。
最初は小さな目標にします。
2週間続いたら少しづつ増やしていくようにします。
- 毎日している習慣に紐づける(歯磨きをしたら素振りをするなど)
- 毎日決まった時間に行う(朝練・夜練)
- 鏡の前でフォームを確認しながら行う
- 素振り専用の竹刀や木刀を使う(重さやバランスを変えると効果的)
- 記録をつけて達成感を得る(ノートやアプリ)
- 毎日必ずしている習慣に紐づけると「決める」と習慣化します。例)新聞を読んだら→素振り
夕飯を食べたらお風呂に入る前に→素振り
朝起きて水を飲んだら→素振り
歯磨きをしたら→素振り
習慣化の名言
素振りの習慣化に役立つ名言です。
「千里の道も一歩から」
これは、どんなに大きな目標も、目の前の小さな一歩の積み重ねから始まることを教えてくれる言葉です。
毎日100本、200本と地道に素振りを続けることは、遠く感じられるかもしれませんが、この一歩一歩が、やがてあなたの剣道を大きく成長させてくれます。
「継続は力なり」
この言葉は、素振りを続けることの価値を最も端的に表現しています。
一回や二回の稽古で劇的に強くなることはありません。
しかし、素振りを毎日続けることで、あなたの竹刀は、より鋭く、より速く、そしてより重みのあるものに変わっていきます。
継続することそのものが、何物にも代えがたい「力」となるのです。
まとめ
素振りは「剣道の基礎」であり、「上達の近道」です。
初心者は型を固め、中級者は体力とスピード、上級者は冴えと心を追求します。
段階に応じた素振りを意識することで、剣道全体の力が底上げされます。
素振りは、ただの反復ではなく「心を整える修行」でもあります。
毎日の積み重ねが、審査や試合での一本となっていきます。
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