二段までは「基本を正しく身につけているか」が中心でしたが、
三段になると基本の審査基準は一段と厳しくなっていきます。
三段でも初段・二段と引き続き、基本が重要視されています。
審査は勝敗とは関係ないので「心技体を尽くした剣道」をしていきましょう。
「稽古ではできるのに、立ち合いでは力を発揮できない」という受審者が多く見られます。
大きな原因は「稽古と立ち合いの違いを理解できていないこと」です。
その違いを整理し、三段合格に必要な考え方と稽古法を紹介します。
三段審査の合格基準
剣道の段位規則によれば、三段は 「剣道の基本を修錬し、技倆優なる者」 に与えられるとされています。
初段 → 一級受有者で、中学校2年生以上の者
二段 → 初段受有後1年以上修業した者
三段 → 二段受有後2年以上修業した者
(全剣連「称号・段位審査規則」第17条(受審資格))
1.五段以下の実施審査は、規則第15条に定める付与基準に基づくほか、特に下記の項目を着眼点として、当該段位相当の実力があるか否かを審査する。ただし、審査の方法は地方代表団体の実情に応じて、それぞれが定める実施要領により行う。
初段から三段まで
①正しい着装と礼法
②適正な姿勢
③基本に則した打突
④充実した気勢
形審査
- 初段:太刀の形3本
- 二段:太刀の形5本
- 三段:太刀の形7本
- 四段:太刀の形7本と小太刀の形3本
- 五段:太刀の形7本と小太刀の形3本
- 六段から八段まで:太刀の形7本と小太刀の形3本
剣道の三段審査は、これまでの段位とは異なり、単に技ができるだけでなく、剣道の「基本」がどれだけ身についているかを厳しく問われる審査です。
二段を取得してからの2年間でどれだけ成長したかが重要になります。
三段審査の着眼点
全日本剣道連盟の「称号・段位審査規則」に示されているように、三段審査では主に以下の4つの項目が評価されます。
これらの項目は、剣道の基本がどれだけ身についているかを測る上で非常に重要です。
1. 正しい着装と礼法
剣道は「礼に始まり礼に終わる」と言われるように、礼法を重んじる武道です。
礼が欠けたら剣道は続けられません。
着装も礼法の一部であり、審査員は、面紐については、長さやきちんとそろえているか?
胴着や袴がしわが寄っていたり着崩れていないか?など、細部にわたるまで見ています。
正しい着装と礼法は、剣道への真摯な姿勢と、武道としての品格を表すものです。
2. 適正な姿勢
剣道の「姿勢」は、心と体の状態を映し出す鏡です。
「構え」の基となる体勢です。
- 安定感があり
- よく均衡がとれ
- 身体のどの部分にも無理がなく
- どのような相手の変化にも適切に対応できる
ようにします。
3. 基本に則した打突
三段審査では、ただ打てばいいというわけではありません。
打突の「機会」「間合」「気勢」「残心」といった要素が、
基本に忠実であるかが厳しく審査されます。
たとえば、相手の技の起こりを捉える「出ばな技」や、相手の動きに合わせて放つ「応じ技」など、単なる「打突」ではなく、基本に則した「有効打突」を打つことが求められます。
過去に、下から派手に胴を打ち、三段を落ちてしまった仲間がいました。
刃筋正しく、基本通りの技を仕掛けましょう。
4. 充実した気勢
「気剣体一致」という言葉があるように、気勢は剣道の要です。
三段審査では、一本一本の打突に気迫と気合がこもっているか、相手を圧倒するような強い気勢を出せているかが評価されます。
また、審査中、打突をしていない時でも、常に充実した気勢を保ち、集中力が途切れていないかどうかが重要になります。
合格への道
三段の審査は、基本が中心となっていますが
これまでの段位より、剣道という武道をどれだけ深く理解し、実践しているかが問われます。
日々の稽古から、正しい着装や礼法、適正な姿勢、基本に則した打突、そして充実した気勢は、どれも剣道における「基本」であり、これらを高いレベルで実践できることが三段の合格基準となります。
三段の受審資格が「二段受有後2年以上修業した者」となっているのは、
この2年間でどれだけ剣道の基本を掘り下げ、
心技体を向上させてきたかを審査するためです。
これから三段審査に挑む方は、これらの点を意識して日々の稽古に励んでみてください。
稽古と立ち合いの違いを理解する
稽古の目的
- 正しい打突を身につける
- 姿勢・礼法・残心を徹底する
- 攻め合いの基礎を磨く
立ち合いの目的
- 相手に一本を取ること
- 駆け引きや心理戦が強く影響する
- 限られた時間で「自分の剣道」を表現する
立ち合いは、ただの稽古とは違います。
緊迫した場で、精進すべく実践する剣道なんです。
試合のようにやみくもに一本を取るのではなく
基本通りに 正しく 有効打突を取ります。
剣道で「一本」と認められる打突――それが「有効打突」です。
これは、ただ打てばいいというものではなくて、全日本剣道連盟の試合審判規則できちんと定義されています。
その条件は、ちょっと厳しいけれど、とても大切なものばかり。
- 気勢が充実していること(気持ちが乗っている)
- 姿勢が正しいこと(体の軸がぶれていない)
- 刃筋が正しいこと(竹刀の角度が正しく、斬るように打てている)
- 竹刀の打突部で、正しい打突部位を打っていること
- 打った後に残心があること(気を抜かず、次の動きに備えている)
これらすべてがそろって、初めて「一本」として認められるんです。
つまり、有効打突とは、気・剣・体が一つになった打突。
よく「気剣体の一致」と言われますが、
それが本当にできているかどうかが、剣道の本質なんですね。
打った瞬間だけじゃなく、その前後のすべてが見られている。
だからこそ、一本には重みがあるし、そこに剣道の深さがあるんです。
👉 稽古は「理想を追求する場」、立ち合いは「実戦で試す場」と考えると理解しやすいですね。
よくある不合格パターン
- 稽古ではできている形が、立ち合いになると崩れてしまう
- 打突は速いが「攻め」がなく軽く見える
- 勢い任せの突進型で技倆の良さが伝わらない
- 勝負には強くても、礼法や残心が欠けている
👉 三段で落ちる人の多くは「実力不足」ではなく「稽古と立ち合いのバランスを取れていない」ことが原因です。
改善策(稽古法)
1. 稽古に立ち合いを取り入れる
- 模擬立ち合いを練習場で行う
- 稽古の中でも「一本を取る意識」で臨む
2. 立ち合いの映像を振り返る
- 正しい姿勢・構えがとれているか?
- 攻めがなくなっていないかをセルフチェック
3. 攻めから打突への流れを徹底する
- 積極的に攻める → 攻め勝った時に初めて技が通用する
相手を心身両面から崩して隙を作ります、
相手の竹刀に触れる、抑える、払うなど相手の剣先を正中線から外しましょう。
4. 残心を習慣にする
- 打突後に油断せず、相手のどのような攻め返しにも直ちに対応できるようにする
- 打突後に間合いをとって、直ちに中断の構えとなり正対して相手の攻め返しに備える
- 打突後に適正な間合いがとれない場合は、自分の剣先を相手の中心(咽喉部)につける
残心がないと有効打突にならないので注意が必要です!
名言からのアドバイス
剣道には次の言葉があります。
「稽古は試合のごとく、試合は稽古のごとく」
稽古は常に試合を意識して真剣に行い、試合いは稽古の延長として冷静に臨むこと。
剣道には「稽古は試合のごとく、試合は稽古のごとく」という言葉があります。
これは、日々の稽古と試合(立ち合い)をどう捉えるかという、剣道の本質に関わる大切な教えです。
まず「稽古は試合のごとく」とは、稽古をただの練習としてではなく、
本番の試合のように真剣に取り組むことを意味します。
竹刀を交える一瞬一瞬に集中し、技を出すときは迷いなく、気剣体一致を意識して打ち込む。
相手との間合いや気の流れを感じながら、常に「一本を取る」気持ちで臨むことが求められます。そうすることで、技術だけでなく、心の強さや判断力も磨かれていきます。
一方、「試合は稽古のごとく」とは、試合の場でも冷静さを失わず、
稽古の延長として自然体で臨むことを意味します。
試合になると緊張して力が入りすぎたり、普段の動きができなくなったりすることがあります。
でも、稽古で積み重ねたことを信じて、いつも通りの構え、いつも通りの打ち込みをすることが大切です。
試合だからといって特別なことをしようとせず、稽古の延長として落ち着いて向き合うことで、本来の力が発揮されます。
この言葉は、剣道に限らず、学びや仕事、人生のあらゆる場面にも通じる考え方です。
日々の努力を本番のように大切にし、本番では日々の積み重ねを信じて自然体で臨む。
そうした姿勢が、安定した成果と成長につながっていくのです。
剣道の稽古は、技術を磨くだけでなく、心を整える場でもあります。
「稽古は試合のごとく、試合は稽古のごとく」という言葉を胸に、毎回の稽古を本気で取り組み、試合では冷静に自分らしく戦う。
そんな姿勢が、剣道の深さと美しさを育んでいくのです。
実際には立ち合いとなりますが、この心構えが、三段突破の最大のカギになります。
まとめ
- 三段審査は「基本」が評価対象
- 稽古と同じように落ち着いて立ち合いをする
- 不合格は「攻め不足」「形の崩れ」「残心欠如」に多い
- 改善策は「稽古に立ち合いを取り入れる」「攻めから打つ」「残心を徹底する」
日々の稽古を工夫し、「稽古と立ち合いをつなげる意識」を持つことで、合格に大きく近づけるでしょう。
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